LiDARを利用したレンジファインダーカメラのフォーカス合わせ

趣味でカメラを使っている方の中に、マニュアルフォーカスのレンズとカメラを買ったはいいけど、フォーカスを合わせるのが難しかったり時間がかかったり、ライブプレビューがないからピントが合ってるか分かりづらかったりして結局写真を撮る機会が減ってしまった、ということはないですか?

 

今回はそのような場面をスマホのセンサーを使って簡単に解決できるのではないかと思い、活用できるアプリを開発したのでご紹介いたします。

機能説明


今回のアプリは弊社が開発協力を行っている Sony ToFAR SDK を利用して作成しています。

 

iPhoneに搭載されているLiDARセンサーを使って物体との距離を測ることができます。

距離がわかれば、EVFやファインダーを覗くことなくある程度のフォーカス合わせのサポートができます。


アプリ内の画面にはカラー映像とDepth (深度)情報が表示されていて、画面を位置をタップするとその場所までの距離を画面下に表示してくれます。

今回はマニュアルフォーカスのみ対応しているレンジファインダーカメラの「Leica M9-P」とマニュアルフォーカスレンズの「Leica Summilux 50mm f1.4 1st 前期」の組み合わせでこのアプリを試します。

 

カメラのアクセサリーシュー/ホットシューにスマホカメラを固定するためのホルダーを取り付けます。今回はiPhoneがメインとなるので着脱が簡単なMagSafeに対応したスマホホルダーを使用しましたがMagSafe非対応でも構いません。


細かい位置調整を行なってセットアップは完了です。

 

アプリに機能として搭載した誤差修正ボタンを押してズレを解消していきます。

この機能はスマホホルダーにつけたiPhoneのLiDARセンサーの位置(赤色の線)とカメラの位置(緑の線)がどうしても離れてしまう場合があるためその誤差を修正しなければならないからです。

 

被写体を用意し、アプリに表示された距離とカメラ側のピント位置が合っていることが確認できたら終了です。


実践検証


スタンダードな撮影

道にあるオブジェを撮影してみます。

 

アプリからフォーカスを合わせたい位置をタップし、表示された距離にレンズを回して設定します。

そのまま撮影してみると大体ピントが合う位置になっていることがわかります。

 

特殊な状況下ではない場合はアプリを使わなくとも目視でピントを合わせることが容易なので活躍度合いとしては低いです。


SS1/60 EV+0.3 ISO250 f1.4

薄暗い場面での撮影

ファインダー内に入ってくる光の量が少なくなるとピントが合っているかどうか分かりにくくなり、フォーカスを合わせるのに時間が掛かります。

 

今回のアプリはセンサーを利用しているので、環境に依存せず距離が測れるので、容易にピントを合わせる事ができました。


SS1/24 EV+0.3 ISO1600 f1.4

パターンや複雑な模様が続く場面での撮影

ライブビュー非搭載のレンジファインダーカメラ向けではありますが、同じ模様が連続したり形が複雑だと二重像がピントを合わせたい場所に合っているかどうか目視では分かりづらい状況に遭遇することもあります。

 

その場合でもDepthは面としておおよその距離が分かるためピントを合わせることが容易になりました。


SS1/90 EV+0.3 ISO640 f1.4

ファインダーレスカメラなど特殊なケースでの撮影

かなりのレアケースではありますが、Leica MD-2などそもそもファインダーが搭載されていないカメラで標準レンズで撮影したくなった場合、目測だけで距離を測るのは非常に困難です。

 

なのでファインダーを覗かずに被写体の赤いランプにピントが合わせられるかどうかも検証してみました。

 

左の写真は目測でフォーカスを合わせたのでピントが手前に来ており被写体がぼやけていますが、右の写真はアプリを使用して計測を行いフォーカスを合わせたのでピントが合っています。

 

今まで撮影することのできなかった組み合わせで撮ることができるので表現の幅が広がります。


SS 1/4000 EV+0.3 ISO160 f1.4

補足 : 制限や注意点


このアプリはLiDARを使用するためiPhone12以降のProもしくはProMaxモデルのみ対応しています。

iPhoneのLiDARの最大射程は5mとなっているためそれ以降の距離は測ることができません。

被写体との距離は測れますが、フレーミングはスマホからでは決めることができません。

また距離を測るだけなのでカメラのパララックスを解消する効果はありません。

iPhoneのカメラと使用しているカメラのレンズでは焦点距離が異なる場合があるのでアプリのプレビューと同じ画角にはなりません。

被写界深度が浅いとピント面が狭くなるためフォーカスアシストアプリのみでは十分にピントが合わない場合があります。

まとめ


検証の結果として日常の撮影ではファインダーを覗いてピントを合わせる方が早いですが、薄暗い場所やパターン化された模様にピントを合わせる時には素早くピントが合わせられるので活躍の機会がありそうです。

 

LiDARとモーターを利用してMFレンズを自動で動かしてフォーカスを合わせる製品は既に世の中には存在していますが、専用の機材を購入することなく軽量な手元のスマホで一般のユーザーが同じような体験が出来る事が利点になりそうです。

 

MFのカメラを買う人達はこのアプリを使わなくとも目測で大体ピントを合わせられる方も多いとは思いますが、これからMFに入門したい方や、私のように勢いで買ったはいいものの距離感がまだ掴めていない人には手助けになるアプリになるかと思います。

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