デジタルツインを想定した音響シミュレーションの実装

現実の物や動きをPC上で再現して、様々なシミュレーションなどを行うデジタルツインという技術があります。

これらは現実の部屋などを取り込んでそちらを用いて行う形となりますが、今回はシミュレーション部分にフォーカスし、用意した部屋の3Dモデルと「SteamAudio」を用いて音響シミュレーションを行った事例をご紹介いたします。

 

現実の部屋などを取り込む技術に関しましては、過去に「RoomPlan」を用いた記事がありますので こちら も是非ご覧ください。

次の動画は様々な形状や素材で再現した部屋をPC上に再現し、距離や位置による音の聞こえ方がどのようになるかシミュレーションしたものをまとめた動画になり、以下でこちらの詳細な内容をご紹介いたします。

距離や遮蔽物による音への影響のシミュレーション

距離による音への影響は、空気伝搬による音量の減退を再現しており遠いほど小さく聞こえるようになります。

基本的に通常の空気伝搬による減退ですが、音域ごとにどの程度減退するかの設定を行うことで特殊な環境下でのシミュレーションも可能になります。

 

遮蔽物による音への影響は、遮蔽物自体や壁や天井など周りの材質によって変動します。

無指向性の音波は音源から球状に広がっていき、音源と聞き手の間の遮蔽物が直接の音波を遮るほどに大きい場合、聞き手に聞こえる音は壁や天井からの反射音や遮蔽物を透過した透過音などになります。

コンピューター上で音波を完全な球の波として再現することは難しいため、下図のようにいくつかの線として表しそれぞれがどのように反射・透過するかをシミュレーションすることで聞こえ方を再現しています。

材質による音への影響のシミュレーション

材質による音への影響は材質情報として音域ごとの音の吸収・透過率と、表面の粗さを設定して再現しています。

音波が材質情報を設定したオブジェクトに衝突した際に、各音域がどの程度吸収・透過されるか設定する事で反射される音の割合も求められ、その算出結果に沿って音波の動きが割り出されます。

また表面の粗さも設定することで、オブジェクトに衝突した音がどのくらい乱反射するかも設定することが可能になります。

 

例としてコンクリートのような反射率の高い素材を周囲の材質として用いた場合、反響音が大きくなります。

逆にグラスウールのような音の吸収率が高い素材を周囲の材質として用いた場合、あまり反響せずに原音のみが聞こえるような形となります。

形状による音への影響のシミュレーション

形状による音への影響は、主に反響音がどのように聞こえてくるかによって変わります。

例として完全な球状の部屋を用意した場合、どの位置からの反響音も同時に聞き手の位置に到達するため、他形状の部屋と比較して大きく音が聞こえるなどのシミュレーションが可能です。 

また、音源や聞き手の位置によっても聞こえ方は変わってきますが、リアルタイムにその変化を計算して適用することも可能です。

総括

以上が音響シミュレーションを行った事例のご紹介となります。

これらの活かせる場面としては、新しい部屋を作る際に形状や材質を指定してシミュレーションを行うのはもちろんのこと、既存の部屋を取り込んで、どのような材質のどういった形状の物を配置すれば音の反響が緩和されるのかなどのシミュレーションにも利用できるかと思います。

他にも振動や固体伝搬音も要素として取り入れていくことでより正確なシミュレーションが行えますが、膨大な計算も必要となってくるため、こういった部分にもAIの技術をどんどん活用していけたならと考えています。

上記ブログの内容に少しでも興味がありましたら、お気軽にご連絡ください。

紹介したアプリをオンライン/オフラインでデモを行うことも可能です。

弊社のエンジニアがフレンドリーに対応させていただきます。